音と映像の同期

制作者 : 小笹 里菜

1994年、埼玉県出身。2013年明治大学情報コミュニケーション学部に入学。主にメディアについて学んでおり、ゼミではメディア・リテラシーに関することを研究している。放送研究会では制作パート等で演者を務めることが多々ある。2014年の明大祭では自身で初めて監督となり異なったタイプの女性達をテーマにしたMVを制作した。

The Making Of

今回の撮影には制作者の友人が3名参加した。個性豊かなメンバー達が撮影現場を盛り上げた。

監督から「とりあえずワチャワチャ騒いで」という指示があった後の様子。どのように騒ごうかを模索中である。

缶同士をぶつけるシーンの撮影。なお、音と映像は別撮りで行っている。

空き缶を捨てる部分の撮影風景。思うようにいかず、何度か撮り直しを行っている。なお、撮影自体は数時間で終了した。

Interview

---- このテーマを与えられて、どういう映像にしようと思ったかを教えて下さい。

小笹「音と映像の同期というテーマを与えられて初めに思い付いたのは、『音楽にマッチした映像』でした。いろいろと作品の構造を考えてはみたのですがミュージック・ビデオになってしまってはありきたりだと思い、そうではないものを作りたいと思いました。そこで思いついたのが、音は音でも日常にあふれていて何気なく聞いている音、つまり生活音を使うことでした。まず普段何気なく聞いている音を意識して聞いてみることから始めました。どこにいても世界は様々な音であふれています。雑踏、クーラーの音、誰かの喋り声、雨の降る音……。けれど、このような音が聞こえないときがありませんか? たとえば、何か真剣に考え事をしている時や、落ち込んでいる時など、自分の世界に浸ったり籠っていたりすると、周囲の音が聞こえなくなるとことがあると思います。そこで“憂鬱なわたし”を映像にしようと思いました。静と騒、独りと大勢、青と赤の対比で、寂しげで孤独な“わたし”を表現しました。作品の最後の方では、電車の遮断器の音、空き缶を叩く音や落とす音、人々の喋る音を合わせて、やや不快で不安になるような音にすることで“わたし”の孤独への不安や恐怖を表しました。」

---- かなり難しいテーマだったと思います。苦労した点は何ですか?

小笹「最も難しいと感じたのは、音の録音です。外で撮影をするとどうしても撮りたい音だけでなく風の音なども入ってしまうからです。今回は生活音を部分的に使用したり、無音と音を組み合わせたりしたので多少はごまかしがきいたと思う反面、生活音を意識した作品なので風の音や通行人の声などが入っているのも当然であってアリなのではないかなと思っています。空き缶を叩いたり落としたりした音はビデオカメラではなくiphoneで録音しました。その他には、映像にメリハリをつけることも難しかったです。この作品は赤と青で対比させるために、“わたし”の映像の部分では少し青みがからせてわかりやすく対比の表現をしました。しかし、エフェクトをかけすぎても画がうるさくなってしまうので塩梅が難しかったです。」

---- 今後はどういった活動をしていきたいと思いますか。

小笹「引退番発では『フェイク・ドキュメンタリー』を作ってみたいと考えています。所属している情報コミュニケーション学部のゼミではドキュメンタリー作家の森達也先生のもとでメディア・リテラシーを学んでいます。そして、ゼミ以外の授業でドキュメンタリーについて学んでいたり、森先生の『ドキュメンタリーは嘘を』という映像作品を観てとても惹かれたりして、現在ドキュメンタリーに強い関心を持っています。そこで、自分自身でもフェイク・ドキュメンタリーを制作したいと考えています。『フェイク』なので最終的にはドラマになってしまいますが、その中で映像メディアが持つ負の側面についても表現したいと構想しています。例えば、モザイクの編集や表情のインサートなどです。声が変えられ、顔が映らない人の主張に何の意味があるのか、インサートすることで見る側の心情の方向性を操作するはどうなのか、などメディア・リテラシーに関することを盛り込もうと考えています。私が作ろうとしているのはドキュメンタリーではなく、フェイク・ドキュメンタリーなので多少異なる点はありますが、ドキュメンタリーは制作者の意図や伝えたいことがあって作られているため事実であっても真実ではないこと、一つの真実のたった一か所をある一点からのみ映していることを伝えたいと考えています。」

---- 恵まれた環境に身をおいているのですね。ゼミで学んだ経験を活かして素晴らしい映像を作り上げて下さい。ありがとうございました。

補足 : 「同期する事」の心地よさ

我々人間は目で見た映像と聴こえる音が少しでもズレていたら不快感を憶える。いわゆる「音ズレ」と呼ばれるもので、映像の乱れよりも気になってしまう点である。音が映像とピッタリハマることはなんとも言えない心地よさを感じるのである。


左の映像はロンドンのVFXアーティストOscar Gonzalez Diezが制作した「Beatcam」と呼ばれる映像である。音に合わせてカメラが同心円上を移動していく映像であるが、聴こえてくる音と回るカメラから見える景色、壁にプロジェクションされた映像や写真が出てくるタイミングが完璧に合っている。観ている者を一瞬で監督が作った世界に引きこんでくれる秀逸な映像である。

音と映像を別々に撮り、後でそれらを合わせる方法がある。今回の小笹が作った映像もこの方法をとっている。右の映像はSONYの携帯電話のプロモーション映像「Water Rock」である。映像を見てもらえれば説明は不要であるだろう。この映像は「水が滴る音」を先に収録し、その音を再構成し「パッヘルベルのカノン」に聴こえるよう音楽を作成。その後、水滴の音に合う映像を撮影し、最終的に編集して合わせるというフローをとった。手間はかかるが、確実な方法である。「音」が主役の映像はいっそのこと別撮りにしてしまう方法も十分有効である。


さて、前期のMASTER PIECEはここで一旦終了となる。ここまで見てくださった方には心から感謝したい。次回は8月31日更新の新シリーズを予定している。お楽しみに。(河野)