クローン

制作者 : 服部 滉大

1994年東京都生まれ。 2014年明治大学法学部法律学科入学。映像は全くの素人であったが、放送研究会に入会し、映像の制作を始める。制作する作品はバラエティから3DCGを多用したものまでと幅広い。思いつきで作品を制作することも多く、途中で計画が頓挫した回数は数知れない。

The Making Of

クローン映像の素材撮影を行うには固定して撮影することが不可欠。「同ポジ」と呼ばれるこの撮影手法は、様々な場面で応用が可能である。

写真は、逃げ惑う登場人物を撮影する様子。登場人物のコメディなタッチが作品を大きく引き立てた。演技派である。

Interview

---- このテーマを与えられて、どういう映像にしようと思ったかを教えて下さい。

服部「MASTER PIECEのお話をいただいて始めに思ったのは「クローンかよ... なんだよそれ...」という感じでしたね。クローンエフェクトについては、そういう楽しいことができるらしい程度の認識しかなかったので、クローンエフェクトで出来ることってなんだろうかと作例を見て勉強しましたね。
作品を作るにあたっては、せっかくクローンというテーマなんだから「人間が一人しか出てこないほうがいいだろう」という所から考え始めました。作中に一人しか登場しない独白風の物語が個人的に好きだったりするんですが、本来そういう作品ではありえない、他者との干渉がクローンエフェクトによって持ち込めると新しいのでは?と思いついてこの作品のテイストが決まりました。 方向性が決まった後はかなりの期間この企画を寝かせてました。寝かせたって言うとクリエイターっぽいですけど、ただ忘れてたって言うのが本当ですね(笑) 出演は暇そうにしていた工藤君にお願いしたのですが、今思うと彼のコメディっぽい部分がいい感じにマッチしてくれたと思います。 工藤をどうやってもう一方の工藤と関わらせるかはいい案がなかなか思いつかなかったのですが、結局逃げる工藤とそれを追う工藤というのがわかりやすくていいだろうと思い撮影に移りました。トムとジェリーとか好きなんですよね(笑)

---- 言われてみればトムとジェリーのような作品ですね。本家トムとジェリーにも、トムが分身したかのように見せてジェリーを追い詰めた回がありましたね。


---- 編集技術を要する作品だと思いますが、苦労した点は何ですか?

服部「編集はAE(=Adobe After Effects)という普段使いのソフトで行いました。AEのマスクという機能で、もともとの素材から動く工藤だけを切り取って背景と合成させるのですが、素材によって色調が少しづつずれていたため、工藤が背景から浮いてしまい合成がわかってしまうという問題が起こりました。なので、ひたすら補正を作業を行ったのですがかなり大変でした。
後は、ラストのエレベーターのシーンが大変でした。こちらもマスクを使ったのですがエレベーターの扉の動きと分身工藤の体の隠れ方を揃えなくてはならず、この作業が地味に面倒くさかったですね。途中で今いじっているレイヤーがわからなくなったり、そもそもマスクに詳しくなかったので、↗

↘マスクがコピペ可能だということを最後まで知らなかったりで手を焼きました(笑)。
自分は普段は3DCGを好んで使っているのですが、今回のような使い方は初めてだったので同じソフトでも全く違う使い方ができるということがわかって有意義でした。」

---- 現在2年生ということですが、これからの活動でどういった映像を作っていきたいと思いますか?

服部「自分はなぜかあんまりちゃんと筋のあるドラマとかに興味がなくて、くだらないとかバカバカしいって思ったものをとにかく撮りたくなってしまうんですよね。でも、そういう作品って学生の時期にしか作れないと思うので、アレやっとけばよかったとか後悔しないようにはしたいですね。
結局映像作りって写真を撮るのと同じで思い出のしおりに過ぎないと思うんです。この作品撮ったときはああだったなとか、懐かしいなとか、結構そういう記憶って残るものなんですよね、きっと人生ってすごく短いので(笑)そういう生の記憶をどんどん増やして少しでも色々なことを記憶していたいですね。 なので、作った作品を外に発表するかどうかは関係なくもっとハードルの低いものとして、さも当然のようにコンスタントに作品を作り続けていきたいですね。そうすればもっと毎日が濃く実りのあるものになっていくんだと思います。」

---- 人間、それぞれ様々な考えを持っているものですが、服部さんの映像に対する考えは間違っていないと思います。短い人生だからこそ、好きなことを好きなようにやっていきたいですね。ありがとうございました。

補足 : 分身で魅せる、不思議な世界

「自分自身」は世界に一つしか存在しない。例えば、あなたが「自転車を運転しているその姿」。これは2つ以上存在することは無い。あなたが漕ぐ自転車と同じ挙動を示すモノはこの世に2つ以上存在することはあり得ないのである。しかし、その「当たり前」をコンピュータの力で破壊してしまおう、ということが今回のテーマの意図である。

左の映像はその好例である。一見すると何の変哲もない十字路であるが、よく見てみると同じ動きをする車が何台も続いて走り去っていく。時間を追うごとに道路を走る乗り物の数は増していき、ゆくゆくは乗り物同士がぶつかりそうでぶつからない、不思議な構図が出来上がる。緻密に計算された良作である。

この「クローン」と呼ばれる技法は、かつてはさまざまなミュージックビデオや映画などで用いられていたが、一般の素人が制作するには困難であった。しかし、映像編集ソフトの高度化・低価格化によって、この魔法のような技法を使用した映像が、誰でも簡単に作られるようになった。右の映像はプロではない方が制作した映像である。過程で撮影した猫が走り去っていく映像を編集し、何匹もの猫が走り抜けていく映像へと昇華させた。色調のズレや違和感も全くなく、完成度の高い映像である。この技法は海外のクリエイターが多く使用しているため、興味がある方は検索してもらいたい。
ちなみにこの技法は、2014年に日本テレビ「世界の果てまでイッテQ」で紹介され、日本各地で話題になった。こちらも必見である。(河野)