鏡写し・鏡あわせ

制作者 : 児玉 雄之輔

1994年宮崎県生まれ。2014年明治大学政治経済学部経済学科入学。放送研究会に入会し、2015年度駿河台番発制作パート長を務めている。高校時代は放送部に所属しており、NHK杯全国高校放送コンテストに出場した経験を持つ。撮影・編集を中心に行い、メッセージ性の持った作品を作ることを目標としている。

The Making Of

キービジュアルの「MUBS」を描く部分の撮影はこのように行われている。文字の半分のみを描いて、編集で鏡写しのようにつないでいる。

「M」「U」「B」「S」という4つのアルファベットは全て線対称であるため、このような映像が実現した。画像は「U」の右半分のみを描いているところ。

映像の半ばに登場する、画面中央から登場するトランプの撮影風景。編集により手品のような、不思議な映像を生み出すことが出来る。

撮影は演者と監督、そして広報担当の3名で行われた。カメラは制作者自前のビデオカメラを使用した。

Interview

---- 「鏡あわせ」というテーマを与えられて、どういう映像にしようと思ったかを教えて下さい。

児玉「最初このテーマを聞いたときは「本当かぁ……」と思いましたね(笑)なかなか普段取り組むことのないテーマだったので、どのようなものを作れば良いか全く方向性が見えませんでした。逆に全く扱わないテーマだからこそ、このような機会でもないとなかなか作ることがないので、これを新しい分野に取り組む良いきっかけだと捉えました。このテーマを与えられてから参考となる映像を探したのですが、全体的にミュージッククリップ調のものが多く、制作にあたってどうしても曲に依存する形になりそうだと判断しました。しかし私としては、映像自体で「鏡合わせ」の魅力をお伝えしたいと思ったので、どうしても曲に頼る映像を作りたくない。その結果このような映像になりました。トランプを利用したのは、私の中で「トランプ≒マジック」という勝手なイメージがありまして。そういった雰囲気も演出したくて、このツールを選びました。」

スタッフは非常に少なかった。監督も撮影の準備や後始末等を行うことになる。

---- 「『MUBS』という文字を使用したのは何故ですか?」

児玉「単純に「MUBS」の文字をモチーフにして、いつか映像を作ってみたたかったからですね。「MUBS」というのは、「Meiji University Broadcasting Society(明治大学放送研究会)」の頭文字をとったものです!知らなかった人は今覚えてください!(笑) そして、様々な「鏡合わせ」を見てもらいたくてオムニバス形式にしました。オムニバス形式って、いろいろ見られてなんだかお得な感じしますよね?(笑)。」

---- 映像内でこだわった点、または苦労した点は何ですか?

児玉「こだわった点は、やはりトランプと文字ですね。一番今回で見せたかった点だったので、何度かリテイクを重ねました。それが逆に苦労した点でもあるのですが。映像の背面に「symmetry」という文字列を重ねて、曲と合わせた不思議な雰囲気を演出したかったというのもこだわった点の一つです。また、苦労した点は、編集時に「鏡合わせ」に見せることができるように、撮影の段階から考えなければならなかったことですね。「M」と「U」に関しては水平反転、「B」に関しては垂直反転を使用し、対称面も簡単に割り出せたのですが、「S」をどうやって反転で描き出せるかに関してちょっと悩みました。何度も何度も黒板の前で「M」「U」「B」「S」の四文字を書いて「こんな感じかな?」と撮った映像を確認しながら撮影を進めました。」↗

↘児玉「他にも、編集の段階で、反転させた文字をどう上手く見せるかに関しても苦心しました。また、トランプの散らばり方に関しても、思い描いたようになかなか散らばらず何度かリテイクを繰り返しましたね。やはり始めて取り組む分野だったので、どうやって進めれば、良い方向に進むか分からず全てにおいて苦労したというのが本心ですかね(笑)始めて取り組む分野というのは、新鮮味があって楽しいですね!」

---- これからの活動でどういった映像を作っていきたいと思いますか?

児玉「一番の目標は「テーマ性を持った」映像を作ることですね。その映像作品を見終わったあとに、見てくださった人たちに何か訴えかけるものを残したい。そして見てくださった人たちに作品に込められたテーマを感じ取ってほしい。ひとくちに「テーマ性」といっても、学生生活・人間関係・社会問題・文化論・政治経済に関することなど、身近なものから巨視的なものまで多岐に渡ると思います。その中でとくに「社会性」を意識して、さまざまな角度から映像制作を通して世界を見ていきたいと考えています。また、「映像」というのは、世界を切り取った一部だと私は考えています。世界の捉え方は人それぞれで、何十億人という人が生きていれば、その人の数と同じ分だけの「固有の物語」がある。世界というのは決して客観的なものではなくて、そこに生きている人たちの主観の集合体で成り立っているのではと思います。人間の意識とは、交換可能性など担保されておらず、人は自分以外の人生を歩むことはできません。ですが、自分にとって「他人」が制作した映像を見ることで、見てくださった人たちは「自分以外の世界」を感じ取れることができるのではと考えています。そのような感覚を与えられる映像を作っていきたいと思います。」

---- これから映像制作以外でどういった活動をしていきたいですか?

児玉「現在、2015年6月に開催される駿河台番発の制作パート長を務めています。制作パートの主な活動としては、「深く映像制作に関わりたい!」と考えている新入生と一緒に駿河台番発で上映する作品をつくることです。制作パートの活動の一環として、まったくの素人である新入生に対して、映像作品制作の講習会を数度開催することを考えています。今までと異なり、これから先輩として新入生を指導していく立場になるので、今まで自分が培った技術や得た知識などをどうすれば解りやすく新入生に教えることができるか、これを考えながら今後の活動を進めていきたいです。映像制作はやはり難しいです。しかし難しいながらも、自分の納得のいくものを作り終えた時の感動は、えも言われぬものがあると思います。それでもなかなか自分の納得のいくものを作れないのが現状なのですが(笑) 今回制作した映像よりも、よりよいものを今後も作っていきたい、この一心で私は今映像制作を行っていると思います。そんな感覚や制作し終わった後の達成感を新入生にもぜひ味わってもらいたい。映像制作を通じて感じ取れる、本来の意味での「楽しさ」を新入生に教えてあげられるような指導を活動の中心に据えていきたいです。」

---- 「技術の伝承」にも力を入れているのですね。今後の活躍にも期待しております。ありがとうございました。

補足 : 「鏡の中の見えない部分」の魅力

「鏡写し」とは、鏡のように2つの映像を左右対称に組み合わせることによって制作される映像である。現在までに世界中で様々な鏡写しの映像が制作されており、動画共有サイト「Vimeo」でも高い人気を誇る。左の動画は万華鏡のような世界観をもった、フランスのバンド「LEON」のMVである。映像の質感も相まって、不思議な雰囲気を生み出している。

撮影中ではカメラには映るけれども、確実に編集で切り取られる部分の存在を忘れてはならない。「鏡写し」の映像を制作にあたっての「撮影」作業は、この理由のため非常に滑稽に見える。インターネット上には映像の制作模様を同時に撮影して、それを公開するという風習(?)がある。「Behind the Scenes」と呼ばれるこの動画群と、この「鏡写し」の映像は非常に相性がいい。本編と共に撮影の裏側を楽しむことが出来る。

この映像はYuksekのOff the WallのMV。制作のキーポイントは、物体の位置や手の動きが緻密に計算して行われる「撮影」と、映像のいらない部分を切り落として、鏡写しの画を作り上げていく「編集」の行程を経ている。映像自体は非常に素晴らしいが...→(右の映像へ)

こちらはOff the Wallの「編集前の」映像である。顔を形作る部分の映像には、これだけの人たちが「顔形成」に関わっている。彼らの表情も見ものである。「鏡に映らなかった」部分の面白さ、わかって頂けるだろうか。(河野)