コマ撮りアニメーション

制作者 : 山足 郁人

1994年千葉生まれ。2013年明治大学政治経済学部経済学科入学。放送研究会に入会し、映像制作研究グループ長をつとめた後、主に脚本・撮影を行い、コンスタントに作品を制作している。

The Making Of

映像のキービジュアルとなるシーンの撮影風景。時間の流れを細やかに表現するために、実際に日が落ちるまで写真を撮り続けた。もちろん、キャストは撮影が終わるまで動くことは禁じられた。過酷な撮影だったようである。

手を触れていないのに減り続けるパスタ。このパスタはキャストの男性が作ってくれた。得意料理の1つなようである。その日のスタッフたちのお昼ごはんにもなった。

男性側は動いてはいけないので、男性側のパスタは女性が全て食べた。後に、この男性が動かないようにするための調整が大変だったようである。

カメラはCanon EOS 70D、レンズはEF50mmを使用。室内にもかかわらず明るく仕上がっている。

Interview

映像にはほとんど登場しなかったが、女性の脇腹には血糊を塗っていた。血糊は山足くんの7つ道具の1つ。

---- 「コマ撮り」というテーマを与えられてから何を考えたか、そこからどういう映像にしようと思ったか、この映像を作ろうと決めた経緯を教えて下さい。

山足「このような機会を与えてくださったので、折角なのでコマ撮りでしか表現できないことを撮ってみようと考えました。第一に思いついたのが時間の流れです。ただ何もせずに過ごす一日。普通の動画で表現するならばつまらない画にしかならないと思います。しかしコマ撮りでは陽の傾きなどにより視覚的に時間の経過を把握でき、面白いものが撮れます。」

---- なにかモチーフはあったのでしょうか。

山足「『死んでるみたいに生きたくない』作品内で出てくるフレーズですが、これは伊坂幸太郎氏の『グラスホッパー』という小説の言葉です。数年前に読んでいましたが、いまだにこのフレーズは私の好きな言葉です。なにもせずにぼーっと過ごす一日がたまにはあっても良いじゃないか、と言う人がたまにいますが、私は嫌です。人間はいつ死ぬか分からない。今を大事にして生きている。だから、なにか一つでもやることをやって一日を終えたい。この思いを分かりやすく伝えるために今回コマ撮りという手法で制作してみました。『死んでる』人と『死んでるみたいに生きている』人の一日の過ごし方が変わらないのを表現したかったのですが、そうするとどうしても暗めの脚本しか思いつきませんでした。↙

---- 初めてのコマ撮りアニメ制作ということでしたが、アイデア出しや撮影に苦労した点はありますか。

山足「アイデア出しはそこまで苦労しませんでした。いつも構想などはパッと思いついちゃうんです。撮影においては相当苦労しました。今回は中古の三脚を用いて撮影をしましたが、いつの間にか角度がずれていて、編集している時にそのことに気づいたので調節に苦労しました。また、作品を見ていただければ分かるのですが女性の服や髪が一枚ごとに変わっており、違和感が出てしまったのは反省点です。撮影時に分かる範囲で直してはいたのですがやはり無理がありました。」

---- 確かに三脚は撮影当日に買ってきたものでしたからね。コマ撮りはそういったところの調整が上手くいかないので難しいですね。

山足「個人的な話に移りますが、ナレーションを録音する前にクラスメイトが白血病で亡くなりました。ずっと病と闘っていましたが、事情をあまり知らず、いずれ復学するだろうと考えていたので衝撃は大きかったです。この作品は「死」を扱っていますがこのまま制作を続けて良いのか、と思いました。私は、人の死というものを軽く考えているのではないか。そのような思いに駆られたのです。今までも私が制作した作品では必ずと言っていいほど誰かが死にます。「先輩人殺し過ぎですよ!」と後輩に言われる始末です。しかし今回の件で再確認しました。私は人の死を軽く見たことは一度もありません。今までも、毎日遊んでいた友達を亡くしました。↗

↘英語の先生を亡くしました。マンションのご近所さんが自殺しました。人の死を多く体験してきたからか、人の死について深く考えることが多いです。今回の作品では、「死」についての私の考えをナレーションで表現してみました。ストレートには表現していないので「声」の方にも注意深く耳を傾けてみてください。」

---- これからの活動でどういった映像を作っていきたいと思いますか?

山足「今回、コマ撮りという面白い経験をしたのでこれからも生かせれば良い、と考えてみます。また、いくつか撮ってみたいものがいくつか頭の中で出来上がっており、いつ撮ろうかとうずうずします。これからも誰かが死ぬと思います。しかしそれは、「誰かが死ねば話が面白くなるでしょ!」という考えを持つ誰かさんとは違う、ということにご注意ください。現在撮影中の作品は、家族をテーマにした作品です。人によって好き嫌いがかなり分かれる作品だと思いますが、自分がやりたいことが詰まっているので見て頂けると嬉しいです。まだ日付は決定ではありませんが、2015年6月20日と21日に明治大学駿河台キャンパスで番組発表会が行われます。そこで発表するつもりですので、皆様ぜひお越しください。二年生主体で行われるはじめての番組発表会ですので私もどのような番組発表会になるのかわかりません。きっと素晴らしい発表会となるのでご期待ください!」

---- 「仮死」と「死」の対比は素晴らしいと思いました。お話を聞いて、もう一度映像を見てみると新しい発見がありますね。ありがとうございました。

補足 : コマ撮りアニメーションについて

「映像」は、1秒間に24〜30枚の写真が連続して表示されることで実現される。普通の映像はビデオカメラを用いて風景を連続的に記録していくが、この仕組みを応用したものがコマ撮り(ストップモーション)である。

コマ撮りとは、映像に使用される「コマ」を1フレームごとに撮影していき、編集で組み合わせることによって制作されるアニメーション。1コマごとにジャンプをしたものを撮影し組み合わせることで被写体が浮いている映像を作ることができる等、通常の撮影手法では見られない表現を生み出すことが出来る。

この手法は映像やアニメーション制作の基礎とされ、現在でも世界中のクリエイターに重宝されている。

コマ撮りは昔から用いられている手法のため、それだけで新しく面白い映像を作ることは難しくなってきている。現在は単にコマ撮りを行うのではなく、それに加えた様々なアイデアを盛り込むことがある。

上記の映像は紙を1枚1枚人型に「くりぬいて」制作された。映像の質感も素晴らしいが、これはあらかじめ撮影しておいた写真を用紙に印刷し、さらにそれを撮影することで生み出した表現である。

右の映像はあらかじめ撮影しておいた写真を印刷、それを浜辺に立てて再び撮影することによって、普通は動かない写真の中の風景がまるで動いているかのようにつくられた映像である。

世界中で用いられている「コマ撮り」。これを観ているあなたも是非作ってみてはいかがだろうか。(河野)